Keynote Speaker

Teja

オストハイダ テーヤ(Ostheider, Teja

関西学院大学法学部・大学院言語コミュニケーション文化研究科 教授

ドイツ生まれ。専門は社会言語学、言語政策論。日本の多言語社会と日本語話者の多様性に注目し、政策、教育、意識、行動など、様々な観点から「マイノリティ」(例えば、「外国人」や「障害者」と呼ばれる人々)とのコミュニケーションについて研究している。1991年に来日。龍谷大学文学部卒、大阪大学大学院文学研究科博士課程修了。

<主な著書・論文>

オストハイダ、T.(2005)「“聞いたのはこちらなのに…”―外国人と身体障害者に対する〈第三者返答〉をめぐって」『社会言語科学』7(2): 39-49

オストハイダ、T.(2017)「日本の多言語社会とコミュニケーション―意識・政策・実態」宮崎里司・杉野俊子(編)『グローバル化と言語政策』116-131、明石書店

オストハイダ、T.(2019)「〈やさしい日本語〉から〈わかりやすいことば〉へ―共通語としての日本語のあり方を模索する」庵功雄・岩田一成・佐藤琢三・栁田直美(編)『〈やさしい日本語〉と多文化共生』83-97、ココ出版

 

留学と「共通語としての日本語」

コロナ禍で留学者数が急減したのは周知の事実ですが、以前より日本の学生が留学に対して消極的であることが報告されています。日本の内閣府が2018年に行った調査によると、「外国留学をしたいと思わない」と答える13~29歳の人が半数を超えました(内閣府2018)。それを受け、日本政府が2023年~2033年の間に50万人の学生を海外へ送り出す目標を掲げました(文部科学省2023)。

一方、経済的支援と「グローバル人材」「世界市民」などの「プラスチック・ワード」だけでは、目標を達成するのは難しいと思われます。学生に「日本代表」としての留学を求める風潮を問い、学生個々人に留学の意義と目的について考える機会を与えるのが急務です。また、日本で留学が語られる際、「日本に来る留学生には日本の良さを覚えてもらいたい」と言いながら、「海外に渡る日本人には母国の良さを再認識してほしい」といったレトリックにしばしば出会います。今こそ、根強い自文化中心主義と、その背景にある、「違い」を強調しがちな「異」文化理解教育を問いなおす好機であるかもしれません。

私が愛車のバイクを売り片道の航空券を手に入れ、私費留学生として京都にやってきたのは25歳の秋でした。当初予定していた1年間の「留学」は、30年間以上の「在留」となりましたが、個人的には、「違い」より、互いの共通するところに目を向けることを大切にしてきました。それは、留学中の支えとなり、また言語と文化に対する理解のカギともなると考えています。本講演では、自分の留学経験を踏まえながら、現在まで体験、観察してきた「共通語としての日本語」に焦点を当て、「意識」「政策」「実態」という3つの観点から、そのあり方を模索していきたいと思います。

 

内閣府(2018)『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 (平成30年度)』https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/ishiki/h30/pdf-index.html

文部科学省(2023)『今こそ「留学」応援します』https://mext-gov.note.jp/n/n1b13c1fabd6e